【人生最後まで生きてみなければ】死神の精度@伊坂幸太郎

【紹介する本】死神の精度@伊坂幸太郎

人間は死の直前まで、
その人らしく生きる。
人間に死が訪れることは
当たり前だけど、

それ以上に、
明日が来ることの方が
当たり前だから。

生きることが当たり前な人間の人生を
“死”というものが当たり前の
“死神の視点”で描く

なんとも不思議な物語。

とにかく読みやすい作品

6話の短編小説からなる構成の小説です。

■苦情処理の電話窓口でナンパされる女 × 死神
■THE任侠ヤクザ × 死神
■密室連続殺人 × 死神
■イケメンであることに悩む男 × 死神
■トラウマに悩む男 × 死神
■死に卓越した老婆 × 死神 

これまた、1話1話が非常に歯切れよく、
設定も面白いので一気に読めます。

人の死を描くので、
心がよじれるような
苦しさを味わわせてくれる
話もありますし、

コミカルに描かれる
作品もあります。

とにかく飽きずに
読みきれると思います。

とにかくよくできた作品

“死神の視点”で人生を語る

この作品を読むと
死についての価値観が
少し麻痺してきます。

なぜなら死神の視点で
作品が進められていくから。

死神にとって当たり前すぎる「死」と
人間に大事な意味合いを持つ「死」

この埋まらないギャップはそのままで、
チグハグなまま
馴染みのない方の視点で描かれます。

この誰も描かなかった視点が面白い。

“死”を軽やかに描く

それから、死を題材にしているにも関わらず
すべてが悲劇というわけではない。

登場人物の誰しもが、
まっすぐに生きているため、

無念と後悔でずっしり重い
そんな印象を残さないのも本書の特徴です。

余命宣告される話ではなく
確実に死ぬことを
死神だけが知っている。

その死神の前で生きる人間の話。

死神にとって死が特別じゃない分
あっさりと描かれます。

とにかく考えさせられる

ある老婆と死神の会話はこう続きます。

「人はみんな死ぬんだよ」

「当たり前だ」

「あんたには当たり前でも、
私はこれを実感するために、
70年もかかったんだてば」

知っていることと、
実感することはまた別物で、
ある老婆の場合、70年かかったと。

人生最後まで生きてみないと
この価値観はきっと共感できない。

ただし、この価値観を
実感したいとも思わない。

でも、いつか否応無しに
向き合う日が来るんでしょう。

最後に

つくづく思いますが、
幸福な人間関係を築けば気付くほど、
いつか苦しくて仕方がない別れが
それだけ多く訪れるわけです。

考え出したらきりがなく途方もなく
なんてしんどい道を
選んでしまったんだとさえ思います。

慣れることなんて全く無理なことです。

どれだけ”悲劇的な人生だ”と、
嘆く瞬間があったとしても、

トラウマになるような
過去の経験があったとしても、

二度と立ち直れないことに直面したとしても、

人間死ぬまで
自分の人生がどうだったかなんて
結論付けることができない。

だから、生き続けるしかないんでしょうね。

一周回って、
とりあえず今日も、
一生懸命生きよう思えました。

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