【一番面白いと満を持して言える小説】ジェノサイド@高野和明

【紹介する本】ジェノサイド@高野和明

とにかく面白い小説に出会えました。

世界を一周したかのような壮大感と、
目を覆いたくなるような残虐な描写と、
涙が出るほど暖かい親子の愛と、
研究者の葛藤と魅力

数週間というスケールと
音速というスピード感が共存する時間軸で

人類の英知と
神との現実的な戦争を題材にした
一本の小説が描き切る。

上下巻2冊800Pの中には間違いなく、
何万人もの人間が生きていて、
それぞれの人生が1つの世界を作っていました。

これは面白い。

“ジェノサイド”の魅力

世界を一周したかのような壮大感

日本とアメリカとコンゴ(アフリカ大陸)を
舞台にして物語が進んでいきます。

舞台が文字通り地球な訳です。

地上も、
デジタル世界も、
空中もひっくるめて
世界まるごとが
舞台で描かれています。

目を覆いたくなるような描写

不幸というのは傍観者であるか当事者であるかで見え方が異なる

本作の中で語られる言葉です。

題材が戦争ですので、
とにかくグロテスク。

戦時は人間の残虐さが表に出るといいますが、
吐き気を催すほどの残酷さを
文字で表現できる限り全力で描きます。

本やニュースを通してでは
あくまで傍観者にしかなれませんが、
登場人物に感情移入しながら
読み進めていけるからこそ
おこがましくも
“当事者”のような錯覚を抱きます。

涙が出るほど暖かい親子の愛

世界を舞台に戦争といった
命をかけた戦いが描かれています。

人の生死がつきまとう作品です。

命をかけて子供のために尽くす親の姿と、
父親としての生き様が描かれます。

研究者の葛藤と魅力

この作品では様々な
エキスパートが登場します。

根底にあるのは知の探求です。
わからないことを解き明かしたい。

そのモチベーションで突き動かされるのが研究者。

未知を求めて未知と戦い、
現実化していく。

その過程がリアルに描かれます。

圧倒的スピード感とそのスケール

物語は数週間という時間軸で描かれます。

この作品は”戦争”が題材ですから
銃や戦闘機も登場します。

音速を超えて迫る兵器の脅威すら描きます。

人類の英知と神との戦争

アメリカの軍事力と
IQ上限の超天才最強タッグが

人智を超えた存在まさに”神”と戦います。

とにかく現実的に語られます。
SFやファンタジーのようで
そうではない。

現実世界の
実現するスケールで
描かれるから面白い。

神は沈黙せずとは
また別の軸で描かれてます。
神は沈黙せず

日本に生まれてよかった

本作で日本語について語られます。
要旨は以下の通りです。

5世紀になって中国から文字を輸入した。
その際、抽象的概念も共に輸入した

中国文字は1つ1つが独自の意味を持つ
中国文字は10万くらい存在する
日本では2~3000くらいが使われる

表音文字より少ないステップで
意味内容に結びつくので
本を速く読めるし、
映画の字幕も苦労しない

確かにアルファベットは26文字だし。
2~3000の漢字を
日常で使う日本人は
正気ではないかもしれません。

しかし、形として意味を捉えやすく、
可読性に優れると。

日本語を習得したからこそ、
生まれた表現や感情があります。
日本人だから出会えた作品がある。
日本語も捨てたもんじゃないなと思います。

人生を変えたかもしれない一冊

この小説を始めて
書店で見たのは2011年

当時話題となって
書店の店頭に大きく取り上げられた
ハードカバーのこの本でした。

正直当時は、
冒頭読んだだけではあまり刺さらず、
上下巻800Pを読む気にもなれませんでした。

あの時、
読んでいれば人生が変わったかもしれません。

ちょうど、大学受験期でしたし、
その後紆余曲折して
化学を専攻することを
決めた年でもありました。

上でも述べましたが、
研究者としての魅力が書かれている本です。

あの瞬間、
大学に進学する直前に、
この本を読んでいたら、
また違うモチベーションで
大学生活を送っていたかもしれません。

出会うべくして出会う。
チャンスはいつだって
ちゃんと与えられていて
それに気づいて、手を出せるかどうか。

人生はそうやって
出来上がっていることを
改めて実感しました。

最後に

改めて小説の素晴らしさを痛感しました。

文字だけで、
世界を人生を作り出すことができる。
本当にすごい。

この小説を通して、
世界を当事者の視点で見なければと思いました。

きっかけはくれるし、
疑似体験もできますが、
自分の目で見て経験しないと、
ものは生まれませんし、語れません。

とにかく面白かったです。

ぜひ、ご一読を。

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